人身について~休業損害、慰謝料、逸失利益等

人身損害とは、治療費、通院交通費、休業損害、慰謝料、逸失利益等、交通事故のためにお怪我をされた場合の「人」に関する損害のことをいいます。

【治療費】

交通事故においてお怪我をされた場合、治療費が発生します。治療費の中には、接骨院の施術費や、いわゆる高額医療に伴う治療費が常に全額認められるかなど、争いのある費用もございます。いかなる費用が損害として認められるかは、事案により異なります。

【通院交通費】

通院に伴う通院交通費としては、自家用車のガソリン代や公共交通機関の運賃等があると思います。

このうち、よく問題となるのは、タクシー通院をした場合のタクシー代です。当然に認められるものではないため、注意が必要です。

【休業損害】

交通事故においてお怪我をされた場合、お仕事やご家族のための家事労働をすることができないことによる損害が発生します。お仕事や家事労働をすることができないことによる損害をどのように判断するのかは、お勤めをされている方、会社を経営している方、家事労働をされている方など、職業やお立場により異なります。損害が発生したことを裏付ける資料も異なります。

また、治療をする必要性が認められる期間と休業をする必要性が認められる期間は異なります。

【傷害慰謝料】

交通事故において、お怪我をされた場合、事故に遭ったことやお身体の痛みによる肉体的・精神的な苦痛を伴うこととなります。このような肉体的・精神的な苦痛は、慰謝料として賠償されることとなります。

慰謝料は、基本的には、入通院をした期間によって算定されますが、通院の頻度や傷害の程度等により異なります。

【後遺障害慰謝料】

交通事故によってお怪我をされ後遺障害が残存した場合、肉体的・精神的な苦痛は、後遺障害慰謝料として賠償されるかを検討することとなります。
後遺障害慰謝料は、基本的には、等級によって算定されます。
等級は、後遺障害の程度や内容を示すものであり、最も重篤な1級から14級まであります。
どの等級に該当するのかは、通常、自賠責調査事務所の調査を経て判断されます。
後遺障害慰謝料の額は、後遺障害が残存した部位や職業、年齢等の具体的な事情により変動する可能性があります。

【後遺障害逸失利益】

交通事故において、後遺障害が残存した場合、後遺障害の影響により将来の収入を得ることができなる場合があります。このような損害は逸失利益として検討することとなります。
逸失利益の算定には、一般的には、以下の算定式が用いられます。

 

基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に応じたライプニッツ係数

 

*詳しくは下記【ライプニッツ係数】へ

 

労働能力喪失率および労働能力喪失期間は、基本的には、後遺障害の等級に応じて算定されます。例えば、14級の後遺障害が残存した場合、5%の労働能力を数年間に亘って失うことが目安とされています。
ただし、後遺障害の等級、職業、年齢等の具体的な事情により変動する可能性があります。

【死亡逸失利益】

交通事故により、お亡くなりになった場合、交通事故によって収入を得ることができなくなったといえます。このような損害は死亡逸失利益として検討することとなります。
死亡逸失利益の算定には、一般的には、以下の算定式が用いられます。

 

基礎収入×(1-生活費控除率)×就労可能年数に応じたライプニッツ係数

 

*詳しくは下記【ライプニッツ係数】へ

 

生活費控除率は、ご存命であれば必要とされる生活費を控除するために用いられるものです。
また、就労可能年数は、基本的には、67歳までとされています。
ただし、職業、年齢等の具体的な事情により変動する可能性があります。

【ライプニッツ係数】

ライプニッツ係数は、将来的に発生する損害を前もって支払うために、将来の損害額から利息や運用等によって増やす機会が与えられた利益を控除して、前もって支払う金額を算定するために用いられる係数です。
一般的に、将来的に発生する損害を将来受け取るよりも、同じ金額を前もって受け取ることの方が、価値が高いとされています。なぜなら、将来受け取る金額を前もって受け取ることで、預金することに伴う利息や運用することによる運用益等によって受け取った金額を増やす機会が与えられたといえるからです。
そのため、将来的に発生する損害を前もって支払いを受ける場合には、将来の損害額から、預金や運用等によって増やす機会が与えられた利益を控除する必要があります。
そのような計算をするには複雑な計算をしなければならないのですが、容易に算定するために、係数をかけ合わせる方法で算定されます。その計算に用いられる係数がライプニッツ係数です。
たとえば、交通事故により、年収500万円の方が、100%の労働能力を喪失し、30年間に亘り全く年収を得ることができなくなったとされた場合について検討します。この場合、30年のライプニッツ係数は15.3725ですので、逸失利益は、以下の計算式のとおり、約7866万2000円と算出されます。

 

500万円(基礎収入) × 100%(労働能力喪失率) × 15.3725(ライプニッツ係数)≒7866万2000円(逸失利益)

 

なお、ライプニッツ係数は、民法改正により今後変動することが予想されます。

【死亡慰謝料】

交通事故によってお亡くなりになったことによる悲しみは計り知れません。
そのような悲しみや辛いお気持は、とても金銭に評価できるものではありません。
ただ、賠償実務上、金銭で評価せざるを得ないため、年齢、家族構成、家族内での立場等を基に死亡慰謝料を検討することとなります。