働き方改革関連法成立に伴う、パートタイム労働法の改正により、正社員と契約社員等との待遇の相違の有無に関する判断要素が変わり、両者に明確な待遇の相違を設ける必要性が高まったこと

第1 パートタイム労働法の改正により、正社員と契約社員等との待遇の相違有無に関する判断要素が変わったこと

1 働き方改革関連法により、正社員と契約社員等との待遇の相違の有無に関する判断要素について、改正がされたこと

先般、いわゆる働き方改革関連法により、各種労働法制が改正されました。同法改正により、いわゆる正社員と短時間・有期雇用労働者(以下「契約社員等」といいます。)との待遇の相違の有無に関する判断要素に関する条文についても、改正がされました。

2 改正以前の判断要素

 改正以前においても、いわゆる正社員と契約社員等との間で、不合理と認められる待遇の相違を設けてはならないとされていました(労働契約法20条)。
そして労働契約法20条は、①職務の内容、②当該職務の内容及び配置の変更の範囲、③その他の事情という3つの要素に基づき、正社員と契約社員等との間の待遇の相違の有無が不合理であるか否かを判断すると規定していました。
裁判例においても、これらの3つの要素を考慮して、正社員と契約社員等との待遇の相違が不合理であるか否かを判断していました。
新聞等において広く報道された長澤運輸事件及びハマキョウレックス事件においても、最高裁は、同条を前提として、待遇の相違が不合理であるか否かを判断し、①及び②の要素について相違がないとしつつも、③その他の事情を考慮することで、一部手当に関する正社員と契約社員等との待遇の相違が不合理ではないと判断をしていました。

3 改正により「その他の事情」という判断要素が削除されたこと

しかしながら、働き方改革関連法により、労働契約法20条は削除されました。新たに「短時間労働者及び有期雇用契約者の雇用管理の改善等に関する法律」(以下「パートタイム労働法」といいます。)9条において、同種の規定がされていますが、同条では、労働契約法20条において判断要素とされていた③「その他の事情」は削除され、①及び②の要素のみが規定されています。
上記の通り、正社員と契約社員等との待遇の相違が不合理であるか否かを判断した最高裁の判例は、いずれも労働契約法20条の③その他の事情の要素により、一部手当に関する待遇の相違が不合理ではないと判断していました。
しかしながら、この度の法改正により、今後は、③の要素が判断要素とされなくなる可能性が高いといえ、長澤運輸事件及びハマキョウレックス事件と同種の事件についても、正社員と契約社員等との待遇の相違が不合理であると判断される可能性が高まったといえます。
正社員と契約社員等との間に待遇の格差を設けている企業が多数といえるところ、従来の対応では、かかる格差が不合理であると判断され、損害賠償責任を負うリスクが高まったといえるため、迅速な対応が必要となります。
そこで、本稿では、パートタイム労働法改正後の、正社員と契約社員等との待遇の相違の設け方について、解説いたします。

労働契約法
第20条(期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止)
有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。

短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パートタイム労働法)

 

第8条(不合理な待遇の禁止)
事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する通常の労働者の待遇との間において、当該短時間・有期雇用労働者及び通常の労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められる相違を設けてはならない。

 

第9条(通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者に対する差別的取扱いの禁止) の禁止)
事業主は、職務の内容が通常の労働者と同一の短時間・有期雇用労働者(第十一条第一項において「職務内容同一短時間・有期雇用労働者」という。)であって、当該事業所における慣行その他の事情からみて、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されることが見込まれるもの(次条及び同項において「通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者」という。)については、短時間・有期雇用労働者であることを理由として、基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、差別的取扱いをしてはならない。

第2 改正以前の判例(長澤運輸事件、ハマキョウレックス事件)では、正社員と契約社員等との待遇の相違に合理性判断において、「その他の事情」の有無により判断がされていたこと

1 長澤運輸事件において「その他の事情」の有無により判断がなされたこと

(1)長澤運輸事件の概要

長澤運輸事件(最判平成30年6月1日民集72巻2号202頁)は、運送会社において、定年退職後再雇用社員の賃金が、同種の職務内容の正社員の約79%であったという賃金格差が、不合理といえるか否かが争点となりました。

(2)最高裁の判断の枠組み

最高裁は、かかる争点について、労働契約法20条に基づき判断をし、同条が規定する①~③の判断要素のうち、正社員と再雇用社員との間で、①職務の内容、②当該職務の内容及び配置の変更の範囲は異ならないと判断しました。

被上告人における嘱託乗務員及び正社員は,その業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度に違いはなく,業務の都合により配置転換等を命じられることがある点でも違いはないから,両者は,職務の内容並びに当該職務の内容及び配置の変更の範囲(以下,併せて「職務内容及び変更範囲」という。)において相違はないということができる。

そのうえで、最高裁は、契約社員等が、定年退職後に再雇用された者であることは、③その他の事情として、考慮すべき事情にあたるとしました。

有期契約労働者が定年退職後に再雇用された者であることは,当該有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違が不合理と認められるものであるか否かの判断において,労働契約法20条にいう「その他の事情」として考慮されることとなる事情に当たると解するのが相当である。

(3)最高裁の判断

以上を前提に、各手当について検討をし、正社員にのみ能率給・職務給が支払われている点について、再雇用社員にもその代わりに高額な基本給や歩合給が支払われていることを③その他の事情として考慮し、不合理な差別には当たらないとしました。
また、正社員にのみ住宅手当・家族手当が支払われている点について、これらの手当てが福利厚生を目的としていること、正社員には幅広い世代が存在すること、再雇用社員は老齢厚生年金の支給を受けることが予定されていることを③その他の事情として考慮し、不合理な差別には当たらないとしました。
このように、長澤運輸事件では、①職務の内容、②当該職務の内容及び配置の変更の範囲が異ならないことを前提としながら、③その他の事情を考慮することにより、待遇の相違が不合理であるか否かについて判断がなされました。

2 ハマキョウレックス事件において「その他の事情」の有無により判断がなされたこと

ハマキョウレックス事件(最判平成30年6月1日民集72巻2号88頁)は、運送会社において、正社員に支払われる、無事故手当、作業手当、休職手当、住宅手当、皆勤手当等が、有期労働契約社員に支払われない点が、不合理な相違にあたるか否かが争われました。
同事件においても、長澤運輸事件と同様に、①及び②の要素に相違はないことを前提としつつ、③その他の事情の有無により、待遇の相違が不合理であるか否かが判断されました。

3 小括

以上のとおり、正社員と契約社員等との待遇の相違が不合理であるか否かを判断した長澤運輸事件及びハマキョウレックス事件に関する最高裁判例は、①職務の内容及び②当該職務の内容及び配置の変更の範囲について、相違がないことを前提としつつ、③その他の事情を考慮することにより、待遇の相違が不合理であるか否かを判断しています。
すなわち、過去の判例では、③その他の事情の要素により、正社員と契約社員等との間にある待遇の違いが不合理であるか否かの判断が分かれたといえます。

第3 法改正により、「その他の事情」の判断要素が削除されたことが、今後の判断枠組みに影響を与える可能性が高いこと

1 「その他の事情」が判断要素とされるとの解釈が考えられるものの、リスクがあること

(1)パートタイム労働法9条が、労働契約法20条の削除を受けて改正されたことを重視する解釈について

上述の通り、法改正後のパートタイム労働法9条では、③その他の事情という判断要素は、条文上、規定されていません。
この点、パートタイム労働法9条は、労働契約法20条の削除を受けて改正されています。かかる改正経緯を前提に、パートタイム労働法9条においても「その他の事情」を判断要素として、考慮できるのではないかとの解釈が考えられます。
しかしながら、労働契約法とパートタイム労働法は異なる法律であり、その目的も異なります。
そのため、訴訟になった場合、改正経緯を参考とすることはできず、パートタイム労働法9条に基づく判断において、「その他の事情」を考慮することはできないとされるリスクがあります。

(2)パートタイム労働法8条と9条を一体として検討する解釈について

条文上、パートタイム労働法9条は、正社員と契約社員等との間で、差別的な取扱いをしてはならないと規定されています。
一方、同法8条は、正社員と契約社員等との間で、「基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて」「業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして」、不合理と認められる相違を設けてはならないと規定し、その他の事情を判断要素としています。
上述の通り、同法9条では、その他の事情という判断要素は規定されていません。しかしながら、同法8条では、その他の事情が判断要素とされています。
そこで、いずれも正社員と契約社員等との間で不合理な待遇を設けてはならないとするパートタイム労働法8条と9条を一体として考え、9条にも8条で考慮要素として挙げられている「その他の事情」を考慮することができるとする考え方もあり得ます。
しかしながら、パートタイム労働法8条は、正社員と契約社員等において、職務の内容が違う場合でも、その違いの程度に応じた扱いをすべきであるという一般的な規定であり、働き方改革関連法により削除された労働契約法20条と同様、等しくなくともバランスの取れた処遇、すなわち、均衡処遇を求める規定といえます。
他方で、パートタイム労働法9条は、正社員と契約社員において職務の内容、職務の内容及び配置の変更の範囲が同一である場合、差別的取扱いをしてはならないとする、同一労働同一賃金の原則を具体化した規定です。同条は、等しきものは、等しく処遇すべきという均等処遇を求める規定といえます。
すなわち8条と9条とは、条文の目的、適用される範囲及び効果が異なるため、8条の「その他の事情」は9条では考慮できないと判断されるリスクがあります。

(3)小括

以上より、パートタイム労働法9条では「その他の事情」を考慮できないと判断されるリスクがあります。
そのため、今後は、長澤運輸事件やハマキョウレックス事件のように、正社員と契約社員等の職務の内容及び配置の変更の範囲が異ならない場合には、待遇の相違が差別的取扱いであると判断されるリスクがあることを前提に、組織づくりをしておく必要があります。

2 無期転換権を行使した無期労働契約社員及び定年後再雇用社員であることを理由とする区別は、パートタイム労働法9条に違反しないとする解釈について

(1)無期転換権を行使した無期労働契約社員であることを理由として、待遇に相違を設けることは、パートタイム労働法9条に違反しないとする解釈について

有期雇用社員の労働契約が更新され、通算5年を超えたときは、労働者が無期転換権を行使することにより、有期労働契約が期間の定めのない労働契約に転換となり、有期雇用社員が、無期労働契約社員となることがあります(労働契約法18条)。
かかる場合において、使用者が、当該社員の待遇の改善をしたものの、昇進の範囲等、人材活用の仕組みを変えなかった場合、正社員と無期労働契約社員との間で処遇に相違が生じる可能性があります。
かかる処遇の相違については、有期契約社員が、法の与えた無期転換権を行使したことに伴い終身雇用となったものであるため、使用者が、かかる雇用形態の変更に適合した合理的な取扱いの違いを施した、すなわち、当該社員の待遇の改善をした結果の待遇の相違であり、パートタイム労働法9条が禁止する「差別的取扱い」ではないとすることができるとする解釈も考えられます。
かかる解釈は、説得力のある解釈ではあるといえますが、「差別的取扱い」の解釈の中で、今後実際に、裁判所が、無期労働契約社員と正社員との待遇の格差をパートタイム労働法9条違反とはならないと判断するか否かは、不透明といえます。
そのため、かかる相違は、パートタイム労働法9条違反であるとされる一定のリスクがあるといえます。

(2)定年後再雇用社員であることを理由として待遇に相違を設けることは、「短時間・有期雇用労働者であることを理由」とする区別ではなく、適法であるとする解釈について

また、正社員が定年退職となった後、定年後再雇用社員として採用した場合、正社員であった当時と同様の①職務の内容及び②当該職務の内容及び配置の変更の範囲のまま、定年前よりも低賃金とする場合について、かかる待遇の相違は、定年後の再雇用であることを理由とした相違であり、パートタイム労働法9条が禁止する「短時間・有期雇用労働者であることを理由」としたものではないとして、差別的取扱いではないとする解釈も考えられます。
この点、パートタイム労働法9条は条文上、全ての賃金格差を問題としているものではなく「短時間・有期雇用労働者であることを理由として」と、短時間・有期雇用労働者であることを理由とする相違に限定しています。
かかる解釈は、定年後の再雇用は、高年齢者雇用安定法に基づく要請からなされる区別であり、短時間・有期雇用労働者であることを理由とした相違とは異なるという解釈です。
これも説得的な解釈ではありますがが、やはり判例上確定的な考えというものではないため、パートタイム労働法9条に違反するとされる一定のリスクが存します。

第4 「その他の事情」が判断要素とされないリスクを踏まえた対応

1 職務の内容と変更の範囲が違うことを明確にすることが重要であること

以上の通り、今後、正社員と契約社員等の格差の有無を判断する際、「③その他の事情」は考慮されないという解釈がなされるリスクがあります。また、無期労働契約社員ないし定年後再雇用社員であることを理由とした待遇の相違は、パートタイム労働法9条に違反すると判断されるリスクがあります。
そのため、正社員と契約社員等との待遇の相違が不合理でないと判断されるためには、正社員と契約社員等の①職務の内容及び②配置の変更の範囲が異なるということを、明確に示すことが重要といえます。
そこで、かかる範囲が異なることを明確に示す方法について、以下に解説をいたします。

2 職務の内容を明確にする必要があること

職務の内容とは、業務の内容及び業務に伴う責任の程度を指します。
このうち業務の内容とは、営業、経理、事務、ドライバー等の、具体的な仕事の内容を指します。
かかる業務の内容について、正社員と契約社員等で明確に異なることは、あまりないかもしれませんが、仮に、正社員と契約社員等の業務の内容が異なるのであれば、それぞれの業務の内容を、職務表等により、明確にする必要があります。
また、責任の程度とは、決裁権限の有無、決済金額の上限の相違、顧客からのクレームに対応の要否等、権限ないし責任の相違を指します。
かかる責任の程度については、正社員と契約社員等で異なる場合が多いと思われます。しかしながら、事実上、責任の程度がうやむやになっていたり、責任の程度が明確に分かれていたとしても、職責表等により、明確に区別がされていなかったりして、契約社員等から、契約社員等がかかる権限を有していたとの主張がされる可能性があります。
この場合において、法律上は、契約社員等側が、契約社員等がかかる権限を有していたことを立証する責任があります。しかしながら、使用者と労働者の立証能力の格差等を踏まえ、事実上は、契約社員等がかかる権限を有していなかったことについて、使用者側が立証すべきとされるケースがあります。その場合、職責表等により、明確な規定がされていないのでれば、かかる立証が困難となり、契約社員等の主張が認められるリスクがあります。
そのため、今後は、正社員と契約社員等との決裁権限の有無やその内容を明確に分け、それぞれの権限範囲を明確化するとともに、そのことを示した職責表等により、それぞれの権限の範囲を明らかにする必要があります。

3 変更の範囲を明確にする必要があること

(1)はじめに

職務の内容の範囲とは、営業から経理へ、事務職からドライバーへなど、業務の内容の異なる部署等への配置変更がされる可能性のある範囲のことを指します。
また、配置の変更の範囲とは、全国転勤があるか、一部地域の中でのみ転勤があるか、もしくは転勤がないかなどの、就業場所が異動となる可能性のあるエリアの範囲のことを指します。
かかる変更の範囲が同一である場合、正社員と契約社員等との間で、基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、差別的取りすることは禁止されます。

(2)配置の変更の範囲について

正社員に関しては、各地域の支店などにおいて経験を積むことが求められることが多いといえ、配置の変更の範囲については、正社員と契約社員等との間で、明確な相違を設けることが、想定されやすいものと存じます。
各地に支店等を有する企業の場合で、正社員は他の支店に異動する可能性があり、契約社員等は他の支店に異動する可能性がないのであれば、その旨、明確に就業規則上の定めをしておく必要があります。
また、現時点では、そのような明確な相違がない場合でも、今後、相違を設け、明確に就業規則上の定めをすることにより、正社員と契約社員等とで配置の変更の範囲が異なることを、明確化することができます。

(3)職務の内容の範囲について

他方で、各地に支店等を有しない企業であっても、社内に複数の部署が存在することもあろうかと存じます。かかる場合、一般的に、正社員は、社内の複数の部署で経験を積むことが求められることが多いといえます。
正社員が、社内の複数の部署に異動する可能性がある一方で、契約社員等は、異動の可能性がない場合には、その旨、明確に就業規則上の定めをしておく必要があります。現時点でそのような相違がない場合でも、今後、相違を設け、明確に就業規則上の定めをすることにより、正社員と契約社員等とで、職務の内容の変更の範囲が異なることを、明確化することができます。

(4)まとめ

正社員と契約社員等の職務の内容及び配置は、ある時点で相違がない場合でも、将来、職務の内容及び配置が変更となる可能性があるか否かで相違がある場合、職務の内容及び配置の変更の範囲が同一でないと判断されることになります。
一般的に、正社員は、長期雇用が前提とされることから、職務の内容及び配置の変更の範囲が変更される可能性があることが多いといえます。そのため、正社員と契約社員等との間で、かかる範囲に明確な相違を設けることで、正社員と契約社員等との間に職務の内容及び配置の変更の範囲が、同一であるとされるリスクを防ぐことができる可能性があります。
なお、配置変更や全国転勤の可能性のある正社員であっても、能力が高かったり、その部署に必要不可欠な人材であったりする等の理由により、事実上、配置変更や転勤のないケースもあろうかと存じます。
就業規則等に明確な定めがない場合、そのような正社員の存在を捉え、正社員と契約社員等との間で、職務の内容及び配置の変更の範囲について、相違がないと判断されるリスクもありますので、就業規則等により、明確な定めがされることが重要といえます。

4 小括

長澤運輸事件及びハマキョウレックス事件は、新聞等において、広く報道されたため、同事件の判例を参考に、組織や規程の見直しをされた企業も多いと思われます。
しかしながら、この度の働き方改革法案に伴うパートタイム労働法の改正により、長澤運輸事件及びハマキョウレックス事件の判例を参考とした組織や規程の見直しでは、訴訟リスクに対応することができない可能性が高いといえます。
この度の働き方改革法案では、有給休暇の取得に関する規定や長時間労働の規制等は、広く報道されていますが、パートタイム労働法の改正については、余り報道されていない現状があります。
しかしながら、契約社員等を雇用されている使用者にとっては、極めて大きな影響がある法改正ですので、上記に指摘させていただきました問題点や、今後の裁判例の動向も含め、注視が必要といえます。
弊事務所では、今後も省庁の政令、通達、解釈例や裁判例の動向を注視し、順次、本ホームページにて、ご紹介して参りたく存じます。

 

以上