交通事故では、実務上、交通事故当時の速度が、過失割合に大きな影響を与えます。裁判例においても、速度超過は、重過失や著しい過失とされ、20パーセントないし10パーセント程度、過失を修正するケースがあります。
過失割合が20パーセント不利に修正された場合、損害額が1000万円であれば、200万円も受け取ることができる金額が減少します。
示談書を作成しないと、下記のリスクが考えられます。
しかし、交通事故の当時の速度がデータ等で客観的に明らかになることはほとんどなく、記憶頼りになるケースが多いといえます。また、死亡事故等の重大な交通事故の場合や高度の障害が残ったような場合には、そもそも証言できる人物がおらず、交通事故の当時の速度を立証することが全くできなくなります。
そのような場合には、交通事故の当時の実際の速度を立証することは極めて困難になります。
実際、弊事務所で対応させて頂いた案件で、ロードレーサータイプの自転車と自動車の出会い頭の交通事故がありました。この交通事故では、自転車側の速度が争点となりました。交通事故の相手からは、自転車がロードレーサータイプのものであったこともあり、自転車側に大きな速度超過があったことを前提とする過失割合の提示がされました。
しかし、自転車の運転者は、交通事故により、昏睡状態に陥り、交通事故の当時の記憶が欠落してしまっており、交通事故の当時の速度がわかりませんでした。
依頼者と話し合いを重ねさせていただく中で、交通事故の当時、自転車の運転者がスマホで、サイクリングアプリであるサイクルメーターを稼働させていたことが分かりました。そこで、弊事務所にて専用ソフトを開発し、解析を行いました。
その結果、詳細な速度及び交通事故の地点等を割り出すことができ、交通事故の当時、自転車の運転者に、速度超過がなかったことが立証されました。
スマホアプリ(サイクルメーター)の解析結果を基に交渉を行ったところ、自転車に速度超過がなかったことが明らかになりました。その結果、交通事故の過失割合について、大きな譲歩を引き出すことができました。また、過失割合以外の点についても大きな譲歩を引き出すことができ、最終的に初回提示案に比べ数千万円の譲歩を引き出すことができました。
本件交通事故では、依頼者に重篤な傷害が残ってしまったこともあり、今後の生活を考えると、賠償額について大幅な譲歩を引き出すことができたことは大きな事情といえます。
くわえて、自転車の運転者が、大幅に速度超過した運転をしていなかったという事実が明らかになり、自転車運転者の名誉が回復されたという意味において、大変大きな成果が得られたものと感じています。
このように、スマホのアプリケーションの解析によって、交通事故の当時の速度を立証することができる可能性があります。そして、ランニング、サイクリングアプリの解析結果によって事実が明らかとなり、賠償交渉に大きな影響を与える可能性があります。
弊事務所は、全国で初めて、サイクルメーター専用の解析ソフトを作成し、交通事故当時の詳細な速度や詳細な交通事故の地点を明らかにすることを可能にしました。今後も引き続き、各種スマホアプリに対応した専用開発をすすめて参ります。
交通事故当時の速度を明らかにすることは、想像以上の困難が伴いますが、アプリケーションの解析により、速度を明らかにすることができる可能性があります。
サイクルメーターをはじめ、各種速度記録アプリケーションを稼働させた状態のスマホを所持した状態で事故に遭われた方は、一度ご相談いただければと存じます。