民法改正とライプニッツ係数


将来の得べかりし利益を現在の価額に計算しなおすための中間利息控除については、現在、ライプニッツ係数に基づく計算方式が使用されています。
そして、民法改正前においては、中間利息控除率は年5%と取り扱われます。
最高裁においても、長期の金利低下を反映し、民事法定利率の5%により行うべきと判断しています(最判平成17.6.14民集59.5.983)。
これに対し、今回の民法改正案では、法定利率は年3%になり、変動利率制が導入されます。

  

改正第404条 利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、その利息が生じた最初の時点における法定利率による。

       2 法定利率は、年三パーセントとする。

       3 前項の規定にかかわらず、法定利率は、法務省令で定めるところにより、三年を一期とし、一期ごとに、次項の規定により変動するものとする。

       4 各期における法定利率は、この項の規定により法定利率に変動があった期のうち直近のもの(以下この項において「直近変動期」という。)における基準割合と当期における基準割合との差に相当する割合(その割合に一パーセント未満の端数があるときは、これを切り捨てる。)を直近変動期における法定利率に加算し、又は減算した割合とする。

       5 省略

 

中間利息控除に関する規定は、今までは法律にはありませんでしたが、新たに中間利息控除に関する規定が設けられる予定です。

 

改改正第417条の2 将来において取得すべき利益についての損害賠償の額を定める場合において、その利益を取得すべき時までの利息相当額を控除するときは、その損害賠償の請求権が生じた時点における法定利率により、これをする。

       2 将来において負担すべき費用についての損害賠償の額を定める場合において、その費用を負担すべき時までの利息相当額を控除するときも、前項と同様とする。

 

民法改正後は、中間利息控除率は、5%から3%となり、そのことによって以下の通り、逸失利益が高額化します。また、法定利率が変動するたびに、逸失利益に関する損害額が変動することになります。具体例の通り、3%と5%では、約2100万円もの差が生じることとなります。これに対応し、今後は、損害保険料の値上がりなどが予想されます。

また、民法改正では3%をベースに、市場の新規短期貸付の平均利率を参考に法定利率が変動する運用になります。

なお、新たな中間利息控除に関する規定は、あくまで民法改正の施行後に生じた事故等に適用がなされるものです。現在は民法改正の施行前ですので、現在の事故賠償には一切影響がありませんのでご注意下さい。

 

 

<具体例>
37歳で年収500万円の方が、事故で寝たきりになられた場合
就労可能年数30年、労働能力喪失率100%の逸失利益の算定 

 

控除率

逸失利益の額

計算式

5%

7686万2500円

=500万円×15.3725

3%

9800万2000円

=500万円×19.6004

差額

2113万9500円

 

 

 

3%となった場合及び3%と5%を比較するライプニッツ係数表を公表させて頂きますので、ご利用下さい。また、ライプニッツ係数表については、引用元である弊事務所名を明示して頂きましたら、弊事務所に断りなく、引用頂いても結構です。

 

①3%と5%のライプニッツ複利年金現価の比較表はこちら

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3%と5%のライプニッツ複利年金現価比較表
3%と5%のライプニッツ複利年金現価比較表.pdf
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②3%のライプニッツ複利年金現価表はこちら

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3%のライプニッツ複利年金現価表
民法改正後の逸失利益の計算等で用います。
3%のライプニッツ複利年金現価表.pdf
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③3%のライプニッツ複利現価表はこちら 

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3%のライプニッツ複利現価表
この③の各数値を足すと②の表になります
(例:1年目0.9709+2年目0.9426=2年間1.9135)。
耐用年数がある装具や車いすなどの計算に用います。
3%のライプニッツ複利現価表.pdf
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④5%のライプニッツ係数表はこちら

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5%のライプニッツ係数表
現在、賠償実務で用いられているものです。
5%のライプニッツ係数表.pdf
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