株式の譲渡の禁止に株式交換の禁止が含まれないとした判例

業務資本提携合意書に定められた「株式の譲渡」の禁止に「株式交換による移転」の禁止が含まれ、株式交換契約を承認する旨の株主総会の議案に賛成してはならないという不作為義務があるか、議決権行使の差止請求が認められるかについて判断された判例

名古屋地方裁判所 平成19年11月12日決定(地裁決定)

業務資本提携に関する合意書において禁止されていた「株式の譲渡」に株式交換による移転が含まれ、株式交換契約を承認する旨の株主総会の議案に賛成してはならないという不作為義務があるか、本件議決権行使の差止請求は認められるかが争われた事案。
取引法上の行為である株式の譲渡には、会社組織法上の行為である株式交換は含まれないとしつつも、「譲渡」の一般的な国語の用語法によれば「株式の譲渡」には、株式交換を含むという解釈もありうるとしつつも、合併等、株式の移転を伴わない方法で、自己に不都合な第三者が参画することを防ぐことが出来ない以上、このような参画をおよそ禁止する合意があるとするには疑問があり、M&Aの経験を有する大企業同士が当事者である以上、「株式の譲渡」には、株式交換を含まないとした。
また、「株式の譲渡」に株式交換が含まれるとすると、議案に賛成してはならない不作為義務は認められるが、原則として、議決権行使の差止請求は認められない。例外として①株主全員が当事者である議決権拘束契約であり、かつ②契約内容が明確に本件議決権を行使しないことを求めるものといえる場合に差止請求が認められる余地がある。①についてみると、当事者以外の株主は従業員持ち株会の約6%に過ぎないが、従業員その他について議決権行使をしない合意があるという疎明があるとはいえない。また、②についても、いかなる当時会社間の株式交換が対象となるかは不明であり、この要件を欠くといわざるを得ないとし、差止請求を却下した決定である。


掲載:
ウエストロー・ジャパン 金融・商事判例1319号50頁
M&A判例の分析と展開Ⅱ76頁