車両と歩行者の事故で供述の信用性を否定し事故発生を否定した判例

自動車が、路外の駐車場に後退入庫しようとしていた際、歩行者がフェンスと自動車の間に挟まれて受傷したとする損害賠償請求事件において、当該事故が発生したとの歩行者の供述は信用することができないとして、自動車側の賠償責任を否定した判例

名古屋地方裁判所 平成28年(ワ)第761号 損害賠償請求事件

歩行者から、自動車が、路外の駐車場に後退入庫しようとしていた際、自動車が歩行者に接触し、歩行者が跳ね飛ばされ、フェンスと接触し、フェンスと自動車の間に挟まれたとして、損害賠償請求がされた。
しかし、かかる事故状況を前提とすると、自動車はフェンスに接触する態様で後退していたことになるが、そのような後退態様は不自然といえた。
また、歩行者は、過去に保険金請求歴はないとしていたものの、多数の保険金請求歴があったうえ、過去に不正な保険金請求を行っていた。
さらに、歩行者に多数の通院歴があり、複数の事故の治療のため、同じ期間に通院しているものの、事故毎に通院先を変えていたうえ、複数の事故によって通院していることを隠匿しようとしていたことがうかがわれた。また、病院に通院歴を開示しないよう指示をしていた。
くわえて、休業損害の請求内容が不自然であった。
以上の事情から裁判所は、事故が発生したとする歩行者の供述は信用することができないとして、自動車側の賠償責任を否定し、歩行者の請求を棄却した。
不自然と思われる点について積極的に調査を行った結果、上記事実の存在が判明し、調査結果について丹念に検討を重ね、詳細な主張を行った結果、上記事実が認定されたものである。

 

掲載:ウエストロー・ジャパン