車両盗難後の死亡事故にて自賠法3条の運行供用者責任を否定した判例

エンジンをかけたまま路上駐車をしていた車両が盗難された後、盗難犯人が死亡事故を起こしたため、所有者に対し、自賠法3条に基づく損害賠償請求がなされた事案において、所有者の運行供用責任を否定した判例

原審 名古屋地方裁判所 平成29年(ワ)3045号 (請求棄却)

控訴審 名古屋高等裁判所 平成30年(ネ)545号 (控訴棄却)

エンジンをかけたまま路上駐車をしていた車両が第三者によって盗難され、盗難犯人が車両運転中に自転車と衝突し、自転車運転者が死亡した事故において、車両所有者が自賠法3条に基づく運行供用者責任を負うとして、遺族が車両所有者に損害賠償請求を求めた事案。
原審判決は、車両がエンジンをかけたまま路上駐車していたことから、車両相当程度窃取され易い状況にあったとしつつ、所有者が盗難から1時間後には警察に被害届を提出していること、盗難から事故の発生まで12時間が経過していること、盗難場所から事故現場まで直線距離で20km以上も離れていること、本件事故までに盗難車両が3回パトカーに追跡されて逃走していること等の事情を踏まえると、事故発生時にはもはや所有者に運行供用者責任は認められないとし、請求を棄却した。
これに対し遺族が控訴したが、控訴審においても原審と同趣旨の判示にて所有者の運行供用者責任を否定し、控訴を棄却した。

 

掲載: 
判時 2390号92頁
自保ジャーナル 2028号160頁
ウエストロー・ジャパン